第一章 パーフェクトボーイ
















「今から期末の答案用紙を返しますよ!」


担任の声がした。


そのあとを覆うようにクラスのどよめきが聞こえてくる。


相も変わらず騒がしいクラスだ。





「葵(あおい)・・・・・宇良(うら)・・・・・慧嗚(えお)・・・・・次は、風間(かざま)!・・・・・お前はほんと凄いな。今度もいい点だぞ!次もこの調子でな!」


「・・・・・・・」


担任のこの一言でまたクラス中が騒がしくなる。


凄いだの、サイコーだの・・・・・。


そりゃあ、 彼は頭良くてかっこよくて、人気者だ。


ファンクラブまでできちゃっているし・・・・・。


現に私も彼のことが好きだ。


だけどそのことは誰も知らない、言ってないから・・・・・。


そして、そんな素振りを見せない。


好きスキって自分の気持ち表現するのはいいことだと思うけどあたしはそんなことしない。


隠し通す!なにがあってもそのときまでは・・・・・。


あたしが彼に自分の思いを伝えるその日まで・・・・・。


決して誰にも暴露しない。


あたしに勇気が宿るまで、自信が付くまで、あたし自身を好きになるまで・・・・・。





あたしと雄斗は小さな時からの幼馴染。


だから仲がいいのはあたりまえ!


でも、いっしょにいるだけじゃ気持ちは伝わらないらしい・・・・・。


あたしが彼を気にしだしたのは中学一年の時、もっとその前から好きだったのかもしれなかったけど、気づいたのは中学だった。


何気にいつも優しい雄斗にどきどきしながら接したあのころがとても懐かしいよ・・・・・。





おっと、ここで彼の自己紹介しときますね。


彼、雄斗のフルネームは、 『風間 雄斗』 雄斗なんて今時珍しい名前だ。


席はよく日のあたる窓際丁度真中ぐらいだ。


そしてその隣がこのあたし!


雄斗が好きなあたしにとっては非常に好都合!


だって授業中も一緒に居られるから――――。



女の子は誰だって少しでも好きな人と一緒にいたい・・・・・そうゆうものでしょ?


彼はとっても成績がよく、その容姿も見事なまでにかっこいい。


運動もできる。


一度は憧れるその姿、あなたも想像してみて?



あたしはさっきもいたけど雄斗がとっても好き、だけどそのことは隠すって言ったよね?


そう、そしてその間は雄斗のファンの補佐(手助け)をする。


なぜこんなことを決めたのかは自分でもわからない、だけど助けたい。


雄斗が他の女の子へと心を動かすかもしれない、それでもあたしは雄斗を見て居たい。


ずっと見て居たい。


これは、あたしが決めた、




――――――『ジンクス決め事』――――――




「お帰り雄斗!今回も楽勝だった?」


「・・・・・まあな、でも科学のグループ3の問6が分かなかったなー」


「あーあの科学の蓄積変化問題?」


あたしはテストで出題されていた問題を言う。


「ああ、それ」


「あー、あれ難しかったよねー」


「あたりまえだ、俺が出来なかったのにおまえができるわけねーだろ!」


そりゃあそうだ。


天才の雄斗がわからなかった問題を私が解けるはずがない・・・・・。


たとえ、天と地がひっくり返っても・・・・・。


「で・・・・鈴はどうだったんだ?相変わらずの点か?」


「え?・・・あ、うんん。今回は何とか免れた・・・・・。雄斗のおかげで・・・・・」



この『雄斗のおかげ』と言うのは、実はあたし試験ぎりぎりで雄斗の家へ押し掛け『勉強教えてー!!』とか言っちゃって特訓してもらったのだ。


このもともとの発想はお母さんで、あたしがぶつぶつ言って単語を覚えてると『そんなに必死なら雄斗君に教えてもらいなさいよ!きっと教えてくれるわよ?ほら、雄斗君優しいじゃない?』となにかまわずさらりと言ってのけた。


それからだね・・・・・あたしが雄斗の家へ直行したのは・・・・・。



「よかったな!俺も教えたかいがあったよ」


そういって、雄斗はあたしの頭をよしよしするみたいに撫ぜた。


正直、あたしは雄斗にこうされるのが好きだ。


猫のように丸くなって目を細めて・・・・・にゃぁ〜って鳴きたくなる。


「うん!また、お願いね?」


にゃぁ〜と鳴く変わりにあたしは笑顔で雄斗に微笑みかけた。


「えー龍鈴って風間君に勉強、教えてもらえるの〜?いいな〜。」



そこへ、これまた雄斗LOVEなあたしの大親友!





――――羽須美海夏(はすみ うみか)――――





が口を挟んできた。


海夏は今、一番雄斗に近いと云われている。


あっ!でもそれは幼馴染みのあたしを抜いてだけどね!



「鈴さあ、その『龍鈴』って言うの・・・・・止めたら?」


そういって雄斗、必死に笑い堪えてるし・・・・・。


いつも・・・・・苛められてるんだけどなんか今日はやけにむかつく・・・・・。


「――――べ、別にいいじゃん!!あたしが人から何と呼ばれようが雄斗には関係ないじゃん!!」




ああ・・・・・、何であたしってこんな事しか言えないのだろう・・・・・?


ちょっと、刺のある言葉・・・・・。


何で、言っちゃうんだろう――――・・・・・・・・。


何で? 強がって――――。


自分を正当化する・・・・・?


でも、雄斗だって・・・・・・・・。


いつもあたしを苛めて、笑い者にする・・・・・おちょくる。


昔からそうだな・・・・・・。


ルックスも頭もいい。


けど・・・・・心は?ハートは?


何を思ってるのか分からない。


何を考えているのか、わからない。


手の届かない、雄斗の心は・・・・・雄斗の心の中は未知の世界――――。




「海夏!次の期末あたしとテスト勉強する?もちろん雄斗も一緒♪」


「おい!何勝手に決めてんだよ!」


「いいじゃん!減るもんじゃないんだしさ☆あたしを怒らせた罰よ!」


「ちぇ・・・・・しょうがねえな。その代わりもう人数増やすなよ?」


「うん♪雄斗に教えてもらえれば恐いものは何も無いからね!」


「・・・・・お前がゆうなよ!」



コツン! ・・・・・・・。


いて! 雄斗に頭を小突かれた。



「あ!雄斗、今日あたし帰るの遅いから先にバイト行ってて!」


「あっ今日代議委員会あったよな?」


「そうそう!臨時でね・・・・・何でこんな時に入るかな〜」


「ふーん・・・・・じゃあ俺待ってるわ」


え!? ドキン!! ・・・・・今、 私の心臓が・・・・・少しだけ、鼓動が早くなった?


雄斗の言葉に反応して・・・・・。



「い、いいよ!多分遅くなるし・・・・・ってか、遅いし」


「いや、待ってる」


頑固!! はっきり言って頑固!


これ言い出すともう聞かなくなる。


あたしの手には負えない・・・・・。



「わかった。ありがとね雄斗」


「べつに・・・・・」


この少しの優しさが、雄斗があたしを惹きつける理由。


かもしれない。




あっちなみに海夏はテストのことで他この立ちとなにか盛り上がっている。


海夏は、友達がたくさんいる。


だから、いつも笑顔なのかな?





あたし、龍王星 鈴(りゅうおうせい りんな)。


雄斗とは幼馴染みで、国立三日月学園の高校3年生です。


じつはあたし、クラスの委員長やってます☆推薦だけどね・・・・・。



そして、あたしと雄斗は同じバイト先。


バイトの場所は近くの喫茶店。


ウエイトレスをやってます♪


誕生日は12月25日。


で、A型。だけど全然几帳面じゃない・・・・・。



12月25日、それはクリスマス。


そういえば、今年は今年のクリスマスは多分ホワイトクリスマスだね。


昨年よりも、さらに寒くなってきたから。





そして、このクリスマスに、あたしにとっては重要な大事件がおこる。




でも、その事を知るのは、もっと先のこと。




そう――――――。




すべては、クリスマスの日。




そして、ハッピー、 ハッピーバースデーになるかもしれない。